刀とは
日本刀は平安時代後期に完成された武器。以下では日本刀の各用語などを紹介しながら説明します。
姿
①太刀
長さ76センチ以上で、刃を下に佩くもの。平安時代後期から室町時代初期まで作られ、長寸で長いものは大太刀と呼ばれ、60センチ前後のものは小太刀と呼ばれる。反りが深い。
②刀
腰に差し、刃を上にしている。室町時代の初期から現代まで製作されている。
③脇差し
長さ30センチから60センチ未満の中刀。
④短刀
長さ30センチ前後の短い刀。定寸、寸詰まり、寸伸びの三種類がある。
⑤薙刀(なぎなた)
長刀とも書き、なぎ払う刀といわれ、後世に直されたものを薙刀直しと呼ぶ。
⑥槍(やり)
上古代の鉾(ほこ)より変化した。刺突に適し、直槍、鎌槍、十文字槍、袋槍などがある。
⑦剣
両刃で、無反り。神社仏閣に奉納されたもの。左右対称に製作されている。
形状
刀剣類の長さは刃長、刃渡りによって表される。棟区から切先までの直線距離。反りは、その直線上から棟筋の一番深い長さで表される。次は主な形状。
①鎬(しのぎ)造り
平安中期より存在し、最も多い造り込みで、本造りとも呼ぶ。
②菖蒲(しょうぶ)造り
菖蒲の葉の形に似て、切っ先部分に横手筋がない。
③平造り
短刀に多く、刀、脇差しもこの造りで製作されたものがある。
働き
日本刀鑑賞時の特殊用語。日本刀製作の最終過程である焼き入れの後に、働きが刃紋の中と刃境(はざかい)または、刃縁に生じます。これは、種々の炭素の量が違って表れて、その姿や形で名前が表現されます。最も硬い鋼(はがね)の組織で微粒子が目で確認できるものを沸(に)えと呼びます。沸えと同じ組織ですが、粒子が細く、目で見えないものを匂いと呼びます。肉眼で匂いは霧のように見えます。
日本刀は、よく沸え出来とか、匂い出来と表現されます。相州伝法の刀は焼き入れの際に、高温度処理のために沸えがよく出てきます。相州伝法の刀は、荒沸え出来です。低温処理の備前伝法の刀は匂い出来です。
刃中の沸えと匂いの中、キラリと光った線状のものを金筋とか金線と呼びます。金筋が激しく曲がったものを稲妻とか雷と呼びます。
足
葉(よう)
掃きかけ
棟焼き
飛び焼き
玉(たま)
湯走り
打のけ
薯蔓(いもづる)
ほつれ
二重刃
三重刃
綴(と)じ
沸(に)えと匂(にお)い
焼き入れの後に、土取りの関係で刀身に種々の刃紋が生じ、刃境の上下に肉眼で見える粒子が生じます。これらは刀の地肌に生じた地沸えです。粒子の大きなものを「荒沸え」。刃紋の中に小さい砂が筋になって流れているような沸えを「砂流し」と呼びます。沸えは焼き入れの際、高温で焼いた刀身を水に入れる時の水の温度、冷却の速度、火加減、水加減の調節によって表れます。沸えは、刀身に点の連続帯常円形状、かたまり、芋の蔓のような状態で表れます。沸えが深いとか、沸え出来、沸え本位と称されます。
匂いは地肌と刃紋の境目が鏡に息を吹きかけたようなほんのりとうるんだ状態、または春の霞がほんのりとたなびき線状に表れた状態、夜空の星の天の川のようにぼんやりとかすんだ状態をいいます。しかも、刃紋の境がはっきりせず、柔らかい品位のある状態です。匂いが深いとか、匂い本位、匂い出来と称されます。
元来、沸えと匂いは学問上では同じものですが、沸えは火加減が強かったため、匂いから変化したものです。沸えと匂いは日本刀鑑定の際の基本です。古刀五箇伝も沸えと匂いのどちらかに属します。
山城伝は小沸え本位で、大和伝は中沸え本位、相州伝は荒沸え本位です。備前伝は匂い本位で、美濃伝は匂い出来の伝法です。
反り
日本刀製作の最終過程である焼き入れの後に、刀身に反りが生じます。これは、刃の方が棟(みね、または、むね)の方よりも鉄が薄いので伸びる率が大きくなり、自然と反りが上向きになるのです。もし直刀を製作しようとする場合は、あらかじめ刀を下向きに曲げておくのです。反りには外反りと内反りがあり、京反り(中間反り)、腰反り、筍(たけのこ)反り、無反りに分けられます。
地景
金筋が平地の中に現れたものを地景(ちけい)と呼びます。刃境と刃中に砂地を箒(ほうき)で掃いたような縞模様のものを砂流しと呼びます。映りは、平地に刃紋の影のように白く、または黒く見えるものの名称です。特に備前伝法の鎌倉時代の太刀によく現れます。
...
儀仗用、兵仗用として製作された日本刀は、平安朝時代後期頃より侍、僧侶、公家などによって種々の場所で実戦で使用され、戦国時代、江戸時代、明治維新、太平洋戦線で活躍し今日に至っております。世界中のいたる所を探しても、日本刀のような優れた工芸品、美術品は見あたりません。そして、日本人だけが、武器である日本刀を自国の国宝として選択致し崇拝したのです。これは、武器として製作されたものに対する最高の権威、そして尊敬です。日本刀を創造した刀鍛冶、刀匠は神技神業を全うした神のような存在です。 星野治仲
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姿
①太刀
長さ76センチ以上で、刃を下に佩くもの。平安時代後期から室町時代初期まで作られ、長寸で長いものは大太刀と呼ばれ、60センチ前後のものは小太刀と呼ばれる。反りが深い。
②刀
腰に差し、刃を上にしている。室町時代の初期から現代まで製作されている。
③脇差し
長さ30センチから60センチ未満の中刀。
④短刀
長さ30センチ前後の短い刀。定寸、寸詰まり、寸伸びの三種類がある。
⑤薙刀(なぎなた)
長刀とも書き、なぎ払う刀といわれ、後世に直されたものを薙刀直しと呼ぶ。
⑥槍(やり)
上古代の鉾(ほこ)より変化した。刺突に適し、直槍、鎌槍、十文字槍、袋槍などがある。
⑦剣
両刃で、無反り。神社仏閣に奉納されたもの。左右対称に製作されている。
形状
刀剣類の長さは刃長、刃渡りによって表される。棟区から切先までの直線距離。反りは、その直線上から棟筋の一番深い長さで表される。次は主な形状。
①鎬(しのぎ)造り
平安中期より存在し、最も多い造り込みで、本造りとも呼ぶ。
②菖蒲(しょうぶ)造り
菖蒲の葉の形に似て、切っ先部分に横手筋がない。
③平造り
短刀に多く、刀、脇差しもこの造りで製作されたものがある。
働き
日本刀鑑賞時の特殊用語。日本刀製作の最終過程である焼き入れの後に、働きが刃紋の中と刃境(はざかい)または、刃縁に生じます。これは、種々の炭素の量が違って表れて、その姿や形で名前が表現されます。最も硬い鋼(はがね)の組織で微粒子が目で確認できるものを沸(に)えと呼びます。沸えと同じ組織ですが、粒子が細く、目で見えないものを匂いと呼びます。肉眼で匂いは霧のように見えます。
日本刀は、よく沸え出来とか、匂い出来と表現されます。相州伝法の刀は焼き入れの際に、高温度処理のために沸えがよく出てきます。相州伝法の刀は、荒沸え出来です。低温処理の備前伝法の刀は匂い出来です。
刃中の沸えと匂いの中、キラリと光った線状のものを金筋とか金線と呼びます。金筋が激しく曲がったものを稲妻とか雷と呼びます。
足
葉(よう)
掃きかけ
棟焼き
飛び焼き
玉(たま)
湯走り
打のけ
薯蔓(いもづる)
ほつれ
二重刃
三重刃
綴(と)じ
沸(に)えと匂(にお)い
焼き入れの後に、土取りの関係で刀身に種々の刃紋が生じ、刃境の上下に肉眼で見える粒子が生じます。これらは刀の地肌に生じた地沸えです。粒子の大きなものを「荒沸え」。刃紋の中に小さい砂が筋になって流れているような沸えを「砂流し」と呼びます。沸えは焼き入れの際、高温で焼いた刀身を水に入れる時の水の温度、冷却の速度、火加減、水加減の調節によって表れます。沸えは、刀身に点の連続帯常円形状、かたまり、芋の蔓のような状態で表れます。沸えが深いとか、沸え出来、沸え本位と称されます。
匂いは地肌と刃紋の境目が鏡に息を吹きかけたようなほんのりとうるんだ状態、または春の霞がほんのりとたなびき線状に表れた状態、夜空の星の天の川のようにぼんやりとかすんだ状態をいいます。しかも、刃紋の境がはっきりせず、柔らかい品位のある状態です。匂いが深いとか、匂い本位、匂い出来と称されます。
元来、沸えと匂いは学問上では同じものですが、沸えは火加減が強かったため、匂いから変化したものです。沸えと匂いは日本刀鑑定の際の基本です。古刀五箇伝も沸えと匂いのどちらかに属します。
山城伝は小沸え本位で、大和伝は中沸え本位、相州伝は荒沸え本位です。備前伝は匂い本位で、美濃伝は匂い出来の伝法です。
反り
日本刀製作の最終過程である焼き入れの後に、刀身に反りが生じます。これは、刃の方が棟(みね、または、むね)の方よりも鉄が薄いので伸びる率が大きくなり、自然と反りが上向きになるのです。もし直刀を製作しようとする場合は、あらかじめ刀を下向きに曲げておくのです。反りには外反りと内反りがあり、京反り(中間反り)、腰反り、筍(たけのこ)反り、無反りに分けられます。
地景
金筋が平地の中に現れたものを地景(ちけい)と呼びます。刃境と刃中に砂地を箒(ほうき)で掃いたような縞模様のものを砂流しと呼びます。映りは、平地に刃紋の影のように白く、または黒く見えるものの名称です。特に備前伝法の鎌倉時代の太刀によく現れます。
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儀仗用、兵仗用として製作された日本刀は、平安朝時代後期頃より侍、僧侶、公家などによって種々の場所で実戦で使用され、戦国時代、江戸時代、明治維新、太平洋戦線で活躍し今日に至っております。世界中のいたる所を探しても、日本刀のような優れた工芸品、美術品は見あたりません。そして、日本人だけが、武器である日本刀を自国の国宝として選択致し崇拝したのです。これは、武器として製作されたものに対する最高の権威、そして尊敬です。日本刀を創造した刀鍛冶、刀匠は神技神業を全うした神のような存在です。 星野治仲
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