スティーブさん
スティーブさんと初めてあったのは1991年の秋で、カウパレスで行われたガンショウの会場でした。日本刀を売っていた二人組みで人相の悪い白人のテーブルに、日本刀が二十振りぐらい飾ってありました。全てを吟味した後、あたりを見ると背の高いイタリア系アメリカ人が、メキシコ系アメリカ人のガールフレンドと一緒にいるのが目に付きました。人間味があるカップルらしく見えたので、すぐに声をかけてみました。
「日本刀は好きですか?興味はありますか?」即座にハイと返事されたので、会話を続けました。「ここにある日本刀のほとんどが偽物や数打ち物ですが、二振りは価値があり、一振りは付いている値段は高すぎるが、もう一振りはお買い得です。現代刀で軍装に入っていますが、さらに500ドル払ってもおかしくないですよ。早速ガールフレンドの方が人相の悪い二人組みと商談し、1300ドルを850ドルに値切りました。私もびっくりした次第です。その現代刀をスティーブさんは今も所持しています。価値は少なくとも70万円はします。
そんな楽しい会話があって、私の自己紹介もさせていただき、毎月の日本刀の勉強会にもカップルで参加するようになりました。一年ほどでかなりの目利きになり、今現在五十振りの日本刀を二人は持っています。五振りは、世界一の鑑定家でおられる得能一男先生の鑑定書が発行されています。その一振りにはびっくりするエピソードがあります。
1994年の夏、道場にアンティオク市の元警察官が脇差を買ってくれというので、200ドルで私は直ぐに買い上げました。大きな二十振り用のブナの木の刀掛けに即座に陳列しました。朝の十時頃でした。スティーブさんが昼の十二時頃に道場に来て、そこに掛けてある脇差を拝見したいと申すので、吟味させた直ぐ後に買いたいというので、225ドルで売りました。25ドル即金が入り、笑いながらスティーブさんと道場の真向かいにある「J & Aレストラン」にランチに出かけました。二日後にスティーブさんより電話があって「銘が茎にあるが読めない」と言うので道場に持参してもらい、銘を読んであげました。越之前住兼で、兼の漢字の下が途切れていました。私もその脇差を警察官より受け取った時も、スティーブさんに売った時も精査していなかったので、銘が茎に書いてあるとは知りませんでした。スティーブさんにも九割の日本刀の在銘は偽銘と教えてあったので、銘はどうかと聞くので、正真正銘だと即答で言ってあげました。「研磨して疵を直せばかなり良くなるよ」と言ってあげると大喜びです。棟に鍛え割れが5センチぐらいの長さであったので、これは埋め金で簡単に修理できると言ってあげました。来週日本から師匠が訪米するので、相談してみようということになりました。師匠は疵をみると、直ぐにペンチで外側へ引っぱり大きくして、埋金の用意を致し、日本へ持参することに決めたのです。私が直ぐに航空便で東京へ送りました。三ヵ月後にまた師匠が訪米のとき、研磨、鞘塗り、柄巻き等が終了し、武家造りの拵え金具が付いた脇差に得能一男先生の鑑定書が発行されて戻ってきました。大喜びのスティーブさんは感激してしまいました。総額の投資が1750ドルでした。これは、私が彼に売った金額も込みです。価値は日本円でなんと150万円位です。銘の一番下は切れていますが、得能先生は『兼植作』と鑑定書にはっきり書いていました。あのお方の鑑定書には、この脇差は正真と証すると書いてあります。信用100%の鑑定書です。他のは紙切れです。ヤギにあげてください。それ以上は言いません。
掘り出し物の日本刀をスティーブさんは三十振り以上持っています。彼は電気関係の技師兼ディーゼルエンジンのエキスパートで、ドイツでアメリカ軍の軍曹として、戦車や機関銃を修理していた軍人でした。軍隊に入る以前は、エレキギターとベースギター演奏で飯を食っていました。軍隊に入らなかったら、全米でプロのミュージシャンとして活躍していたでしょう。退役後、リノで電気会社に勤め、サンフランシスコに来てやはり電気会社に勤め、1998年にリタイヤしました。
スティーブさんとも家族ぐるみの付き合いをしています。私が所持している日本刀の九割は優秀なもので、ロスの近くのパモナで開催されるどでかいガンショウで見つけたのですが、いつもスティーブさんとレンタカーを借りて他の生徒と一緒にドライブしていました。現在、一ヶ月に二回は彼の自宅に行き、研磨の指導とエレキギターの演奏に励んでいます。ブッチャけた話、きわどい話もスティーブさんとはしています。彼のジョークは天下一品です。私の息子二人もスティーブさんとは、打ち解けています。二人は赤ん坊の時からスティーブさんと話していて、アドバイスも聞いています。家にある壊れた電機製品、エレキギター、アンプも喜んで修理修繕してくれています。いつも無償なので、彼が 大好きなベースギター、エレキギター、アコースティクギターをたくさんプレゼントさせていただきました。研磨用の珍しい石を京都から取り寄せてプレゼントしました。大喜びの大人です。
スティーブさんは日本刀の研磨も相当にできるのです。棟の磨き棒のアプリケーションは彼にやってもらっています。カウパレスのガンショウでは、テーブルのセットアップ、研磨のデモをいつもしてくれています。彼の研磨技術を拝見して、新しく道場に入門した人がかなりいます。多分、スティーブさんとは死ぬまで一緒に付き合うでしょう。
「日本刀は好きですか?興味はありますか?」即座にハイと返事されたので、会話を続けました。「ここにある日本刀のほとんどが偽物や数打ち物ですが、二振りは価値があり、一振りは付いている値段は高すぎるが、もう一振りはお買い得です。現代刀で軍装に入っていますが、さらに500ドル払ってもおかしくないですよ。早速ガールフレンドの方が人相の悪い二人組みと商談し、1300ドルを850ドルに値切りました。私もびっくりした次第です。その現代刀をスティーブさんは今も所持しています。価値は少なくとも70万円はします。
そんな楽しい会話があって、私の自己紹介もさせていただき、毎月の日本刀の勉強会にもカップルで参加するようになりました。一年ほどでかなりの目利きになり、今現在五十振りの日本刀を二人は持っています。五振りは、世界一の鑑定家でおられる得能一男先生の鑑定書が発行されています。その一振りにはびっくりするエピソードがあります。
1994年の夏、道場にアンティオク市の元警察官が脇差を買ってくれというので、200ドルで私は直ぐに買い上げました。大きな二十振り用のブナの木の刀掛けに即座に陳列しました。朝の十時頃でした。スティーブさんが昼の十二時頃に道場に来て、そこに掛けてある脇差を拝見したいと申すので、吟味させた直ぐ後に買いたいというので、225ドルで売りました。25ドル即金が入り、笑いながらスティーブさんと道場の真向かいにある「J & Aレストラン」にランチに出かけました。二日後にスティーブさんより電話があって「銘が茎にあるが読めない」と言うので道場に持参してもらい、銘を読んであげました。越之前住兼で、兼の漢字の下が途切れていました。私もその脇差を警察官より受け取った時も、スティーブさんに売った時も精査していなかったので、銘が茎に書いてあるとは知りませんでした。スティーブさんにも九割の日本刀の在銘は偽銘と教えてあったので、銘はどうかと聞くので、正真正銘だと即答で言ってあげました。「研磨して疵を直せばかなり良くなるよ」と言ってあげると大喜びです。棟に鍛え割れが5センチぐらいの長さであったので、これは埋め金で簡単に修理できると言ってあげました。来週日本から師匠が訪米するので、相談してみようということになりました。師匠は疵をみると、直ぐにペンチで外側へ引っぱり大きくして、埋金の用意を致し、日本へ持参することに決めたのです。私が直ぐに航空便で東京へ送りました。三ヵ月後にまた師匠が訪米のとき、研磨、鞘塗り、柄巻き等が終了し、武家造りの拵え金具が付いた脇差に得能一男先生の鑑定書が発行されて戻ってきました。大喜びのスティーブさんは感激してしまいました。総額の投資が1750ドルでした。これは、私が彼に売った金額も込みです。価値は日本円でなんと150万円位です。銘の一番下は切れていますが、得能先生は『兼植作』と鑑定書にはっきり書いていました。あのお方の鑑定書には、この脇差は正真と証すると書いてあります。信用100%の鑑定書です。他のは紙切れです。ヤギにあげてください。それ以上は言いません。
掘り出し物の日本刀をスティーブさんは三十振り以上持っています。彼は電気関係の技師兼ディーゼルエンジンのエキスパートで、ドイツでアメリカ軍の軍曹として、戦車や機関銃を修理していた軍人でした。軍隊に入る以前は、エレキギターとベースギター演奏で飯を食っていました。軍隊に入らなかったら、全米でプロのミュージシャンとして活躍していたでしょう。退役後、リノで電気会社に勤め、サンフランシスコに来てやはり電気会社に勤め、1998年にリタイヤしました。
スティーブさんとも家族ぐるみの付き合いをしています。私が所持している日本刀の九割は優秀なもので、ロスの近くのパモナで開催されるどでかいガンショウで見つけたのですが、いつもスティーブさんとレンタカーを借りて他の生徒と一緒にドライブしていました。現在、一ヶ月に二回は彼の自宅に行き、研磨の指導とエレキギターの演奏に励んでいます。ブッチャけた話、きわどい話もスティーブさんとはしています。彼のジョークは天下一品です。私の息子二人もスティーブさんとは、打ち解けています。二人は赤ん坊の時からスティーブさんと話していて、アドバイスも聞いています。家にある壊れた電機製品、エレキギター、アンプも喜んで修理修繕してくれています。いつも無償なので、彼が 大好きなベースギター、エレキギター、アコースティクギターをたくさんプレゼントさせていただきました。研磨用の珍しい石を京都から取り寄せてプレゼントしました。大喜びの大人です。
スティーブさんは日本刀の研磨も相当にできるのです。棟の磨き棒のアプリケーションは彼にやってもらっています。カウパレスのガンショウでは、テーブルのセットアップ、研磨のデモをいつもしてくれています。彼の研磨技術を拝見して、新しく道場に入門した人がかなりいます。多分、スティーブさんとは死ぬまで一緒に付き合うでしょう。