ダニエルさん

ダニエルさんが桑港剣術道場に入門したのは1989年の夏でした。私の道場はそのころDaly Cityに近いMission Streetにありました。夕方に剣術を習いに来て、日本刀も勉強し、ストレス解消の試し切りも良く行い、日本史、日本語にも興味を示していました。週末には日本刀の研磨も習い、特に棟研磨が他の生徒よりも抜きん出ています。私の武道武術に関するアドバイスも喜んで受け入れてくれました。桑港剣術道場で行う催し物、デモンストレーションにも参加しています。毎二月には、カウパレスのガンショウにも助っ人として来てくれています。
 
ダニエルさんには、毎年四月サンフランシスコ日本町で行われる桜祭りで鎧武者として登場してもらっています。特別注文で赤い日本製の鎧を去年調達し着用しています。試し切りのデモをサンフランシスコ市役所から日本町まで闊歩して行っています。
 
ダニエルさんは2011年に若いタイ女性と結婚して跡継ぎの息子も授かりました。私は彼とは二十年以上も生徒と先生の関係にありますが、家族ぐるみの付き合いもしています。星野邸には週に三日は出入りしています。職業は連邦警察官です。いつも拳銃を腰に吊るしています。私達の用心棒です。
 
ダニエルさんには過去20年間、日本刀の優作刀を十五振り以上見つけてあげました。珍しい槍、薙刀、短刀も所持しています。その一つをご紹介致します。現代刀には表銘と裏名があり、添え銘もあります。添え銘は七十四翁。現代刀工鍛治が昭和13年の8月に74歳で製作したものです。ものすごく良く出来た刀で、刃長は二尺三寸、武家造りの拵えが付いています。拵え金具は海にちなんだもので、鮑のデザインの鍔、蟹のデザインの目抜き、縁と頭は貝殻のデザインです。柄は特別注文で長さが30センチ、柄糸は絹で、色は淡い黄緑です。鞘塗りの色はこげ茶色です。私が全部調達したものです。投資総額は4000ドルです。しかし、刀だけで120万円の価値があります。息子さんが14歳になったら贈呈するそうです。