「男友達」だと思っていたミッちゃん
ミッちゃんは、みち子さんの略だと思います。家族が東京の板橋区にいた小学校2年の時に、ミッちゃんは近所の家に住んでいました。歳は一つか二つ上でした。背は私より15センチくらい高かったです。私は、いつも「のっぽのミッちゃん」と呼んでいました。
私たちの住んでいたところは、場所的にあまり良いところではありませんでした。近所にニカワの工場があり、ものすごく臭かったです。空はどんよりしていて、色も黄色のような薄茶です。夏は、台風の影響で2回も床下浸水がありました。畳を持ち上げると、縁の下が水でいっぱいでした。お袋の清子さんが申すには、朝食用に使ったフライパンが、昼過ぎ頃までには真っ赤に錆びていたそうです。空気が悪かったのでしょう。
のっぽのミッちゃんのイデタチは、赤茶のコールテンのつなぎの様なズボンをはいて、おっさんが着る様な長袖のシャツを着ていました。髪の毛が、中途半端なお下げでバサバサのカタチです。くつは、男物のようで色が黒っぽいズックです。ドタ靴の様でした。しゃべり方は下町の男の言葉です。大工の棟梁、魚市場のおっさん、土方のおっさんみたいです。『馬鹿野郎、てめえ何ドジってるんだよ!』『早くしろよ』の連発でした。ミッちゃんは、いつも取っ組み合いのけんかをしていて、体中が傷だらけです。眼帯を掛けている時もしばしばありました。西部劇に出てくる、悪役の拳銃無宿の様でした。笑う時は、いつも「ヒッヒッヒッヒッ」です。全くおっさんみたいな笑い方で、不気味でした。
近くの工場の空き地で石を投げたり、棒切れを探してチャンバラごっこです。いつも負けていました。私がやるひざ蹴りや飛び蹴りは、いつもかわされていました。プロレスもやっていました。いつも、本当に地面に投げ倒されていました。血だらけで帰宅したこともたくさんありました。
一度、私たちの家の直ぐ隣に住んでいた春江ちゃんの家の前でミッちゃんと時間潰しでタムロしていると、着替えていた春江ちゃんが、真っ裸で部屋を横切りました。その素っ裸を見たミッちゃんの顔は今でも忘れません。二、三本前歯が抜けている不気味な顔で「ヒッ ヒッヒッヒッ」と笑うのです。「おい、今のを見たかい? いいねえ」と私に、問いかけるような顔で笑っていたのです。そこらにタムロする、どスケベ兄ちゃんのような男丸出しの顔です。その夕方に、お袋の清子さんに、素っ裸の隣の春江ちゃんを見た私たちのことを言うとあきれるばかりです。
ある日、男風呂でミッちゃんと会いました。一緒に洗いっこしていると、前にチンチンが無いのでおかしいなと思いました。お袋の清子さんに言うと、笑いながら「あの子は、女の子なんだよ」と言うのです。「お前は、アホだから知らないんだよ」と一点張りのお袋です。ミッちゃんとは、いつもけんかして、暴れていたので、男友達をなくしたように感じ、私は実にさびしい思いをしました。男風呂で会う前までは、ミッちゃんは「どスケベの先輩の男の子」と思っていました。それ以来、気まずくなったのでミッちゃんと遊んでいません。
しばらくして、板橋区から両親が川崎に引越しました。ミッちゃんと永遠の別れでした。
私たちの住んでいたところは、場所的にあまり良いところではありませんでした。近所にニカワの工場があり、ものすごく臭かったです。空はどんよりしていて、色も黄色のような薄茶です。夏は、台風の影響で2回も床下浸水がありました。畳を持ち上げると、縁の下が水でいっぱいでした。お袋の清子さんが申すには、朝食用に使ったフライパンが、昼過ぎ頃までには真っ赤に錆びていたそうです。空気が悪かったのでしょう。
のっぽのミッちゃんのイデタチは、赤茶のコールテンのつなぎの様なズボンをはいて、おっさんが着る様な長袖のシャツを着ていました。髪の毛が、中途半端なお下げでバサバサのカタチです。くつは、男物のようで色が黒っぽいズックです。ドタ靴の様でした。しゃべり方は下町の男の言葉です。大工の棟梁、魚市場のおっさん、土方のおっさんみたいです。『馬鹿野郎、てめえ何ドジってるんだよ!』『早くしろよ』の連発でした。ミッちゃんは、いつも取っ組み合いのけんかをしていて、体中が傷だらけです。眼帯を掛けている時もしばしばありました。西部劇に出てくる、悪役の拳銃無宿の様でした。笑う時は、いつも「ヒッヒッヒッヒッ」です。全くおっさんみたいな笑い方で、不気味でした。
近くの工場の空き地で石を投げたり、棒切れを探してチャンバラごっこです。いつも負けていました。私がやるひざ蹴りや飛び蹴りは、いつもかわされていました。プロレスもやっていました。いつも、本当に地面に投げ倒されていました。血だらけで帰宅したこともたくさんありました。
一度、私たちの家の直ぐ隣に住んでいた春江ちゃんの家の前でミッちゃんと時間潰しでタムロしていると、着替えていた春江ちゃんが、真っ裸で部屋を横切りました。その素っ裸を見たミッちゃんの顔は今でも忘れません。二、三本前歯が抜けている不気味な顔で「ヒッ ヒッヒッヒッ」と笑うのです。「おい、今のを見たかい? いいねえ」と私に、問いかけるような顔で笑っていたのです。そこらにタムロする、どスケベ兄ちゃんのような男丸出しの顔です。その夕方に、お袋の清子さんに、素っ裸の隣の春江ちゃんを見た私たちのことを言うとあきれるばかりです。
ある日、男風呂でミッちゃんと会いました。一緒に洗いっこしていると、前にチンチンが無いのでおかしいなと思いました。お袋の清子さんに言うと、笑いながら「あの子は、女の子なんだよ」と言うのです。「お前は、アホだから知らないんだよ」と一点張りのお袋です。ミッちゃんとは、いつもけんかして、暴れていたので、男友達をなくしたように感じ、私は実にさびしい思いをしました。男風呂で会う前までは、ミッちゃんは「どスケベの先輩の男の子」と思っていました。それ以来、気まずくなったのでミッちゃんと遊んでいません。
しばらくして、板橋区から両親が川崎に引越しました。ミッちゃんと永遠の別れでした。