「ガハハガハハ」と笑うサダ子さん

サダ子さんに会ったのは1976年ごろで、道場に空手を習いに来ていた息子のトニー君の母親でした。トニー君は養子でその頃の歳は８歳でした。サダ子さんは、日本でアメリカ兵だったミスタージョーンズと結婚して、60年代後半に日本から来ていました。仕事は、サンフランシスコのあるホテルでメイドさんとして働いていました。気の良いおばさんです。嬉しくなったり、おかしくなったりする時は、必ず「ガハハガハハ」と二回大きな声を出して笑います。男のような無作法な笑い声です。でも愛嬌がありました。

正月になると、家に招待してくれました。他にも、トニー君の誕生日やクリスマスなどにも招待してくれ、豪華な日本食をご馳走してくれました。その頃独身だった私は、サダ子ジョーンズさんの家に行く時は、いつも違ったガールフレンドを連れて行っていました。「何でいつも、先生は違う女性ばかり連れているのか」と尋ねられ、ふざけて「彼女たち、私の腰にしびれているんですよ」と言うと、また「ガハハガハハ」と二回笑いました。それを聞くと、実に私も幸せ気分です。彼女は、10歳くらい年上のお姉さんの感がありました。結構、ぶちゃけた話もしました。とても働き者の女性です。彼女の日本人の友達にも会いました。みんなアメリカ兵と結婚していました。ミスタージョーンズは結構日本語ができました。お姉ちゃん達を誘うナンパ的な日本語を話していました。「何、飲むの？」「美人さんだね」「ホテルへ行こうよ」なんて、ミスタージョーンズは言っていました。

1978年頃、道場の近くのガソリンスタンドでサダ子ジョーンズさんに会った時、すごくどでかいアメ車に乗っていました。車種はRiveraです。小さなサダ子さんは、どでかい車に乗っていると安心するのです。事故に遭遇した時は、たいがいは相手の車が潰れるそうです。そして、またもやそれを自慢の様にして「ガハハガハハ」と二回笑うのです。

10年ぐらい過ぎて、1988年頃に日本町で剣術と試し切りのデモを終了して、生徒と話していると「ガハハガハハ」と声が遠くから聞こえてきました。そうです。サダ子ジョーンズさんです。

それから、また10年ぐらい過ぎて1998年頃、日本町のパゴダステージで、息子二人と生徒二人でエレキギターの演奏を終えて話していると、また、「ガハハガハハ」と二回聞こえました。ブキャナンモールを歩いているサダ子ジョーンズさんを発見しました。イデタチと歩き方でサダ子さんと確認できました。

2005年頃にも、サンフランシスコのいろいろな場所で「ガハハガハハ」の声を二回聞いています。いつも、サダ子ジョーンズさんでした。もう36年以上も聞かされている特殊な笑い声です。サダ子さん以外の人は、こんな笑い声はしないでしょうと、確信する私です。

日本で東日本大震災があった直ぐ後、私はサンコークッキングの店の前で、キッチンナイフを砥いで募金集め活動をしていました。キッチンナイフを砥いでいると、やっぱり、あの頼もしい「ガハハガハハ」の笑い声が聞こえてくるではありませんか。そうです。そうです。またまた、サダ子ジョーンズさんです。今回、彼女をつかまえて、ちょっとお話しをいたしました。トニー君は結婚して子供がいるそうです。しかし、奥さんが爆乳だったので「Breast Reduction Surgery」を最近したそうです。また、例の調子で、笑いました。「ガハハガハハ」「ガハハガハハ」。この笑い声を聞くと、私は心が和みます。